グリーンな未来がビジネスチャンスを生みだす
ソシエテ・ジェネラルは今年、日本で創立50周年を迎えました。その節目に、エネルギー転換がいかに日本経済に重要な役割を果たすのかを考察します。
ソシエテ・ジェネラル銀行が1973年に東京支店を開設した当時、日本は高度成長期にあり、名目GDP(国内総生産)は1965年の910億米ドルから1980年には1兆米ドルへと大きく拡大しました。日本の消費者向けブランドは世界中の家庭に浸透し始め、日本の工業製品のすばらしさ、特にエレクトロニクスとエンジニアリングの質の高さへの評価が定着した時期でもあります。
それから50年、日本は少子高齢化と脱炭素化に直面し、その確固たる経済モデルは再び大きな岐路に立っています。
特に、脱炭素化へのエネルギー転換は日本にとって大きな課題の一つです。太陽光発電や風力発電を増やすには、山がちな地形や沿岸水域の深さ、人口密度の高さが大きなハードルになりえます。福島原子力発電所の事故以降、原子力発電は休止が長引き、化石燃料への依存が続いています。2022年時点では、日本はエネルギー需要の90%近くを輸入し、エネルギー消費量の約4分の1が石炭でした1。加えて、日本の送配電網(グリッド)は依然として、再生可能エネルギーへのシフトに対応できる状況にはありません。
また、日本経済は脱炭素化が困難なハード・トゥ・アベイト産業に大きく依存しています。日本は世界第3位の鉄鋼生産国であり2、第2位の海運大国でもあります3。さらに、自動車と自動車部品にけん引される製造分野は日本のGDPの約20%を占め、先進7カ国(G7)の中でも最も高い割合となっています4。
一方で、エネルギー転換は日本にとってチャンスともなり得ます。日本が未来のサプライチェーンの主導的立場を握る機会だと、当グループは考えているからです。
日本の高度なエンジニアリングにおける実績と成熟した金融市場、そして一貫性のある脱炭素化政策は、低炭素ビジネスモデルを発展させるための堅固な土台となります。イノベーションを推進し、海外投資家への働きかけを強化することにより、日本はよりサステナブルな未来への移行というチャンスを最大限に活用できるはずです。
新たなアプローチ
日本のエネルギー転換には、新しいテクノロジー、新しいビジネスモデル、そして、新しい金融ツールが必要です。
日本はすでに新しいテクノロジーに取り組んでいます。政府は、電源構成に占める再エネ比率の目標を引き上げ、2030年までに36~38%とする計画を示しています。洋上風力発電は、2040年までに最大45GW(ギガワット)への拡大をめざして開発業者の誘致に取り組んでいます。
その先も視野にいれると、浮体式洋上風力5、深海タービン6、潮流発電機向けの利用や膨大な地熱資源の活用も選択肢となりえるでしょう。
しかし、最も注目されているテクノロジーはグリーン水素でしょう。グリーン水素は、電化が難しい鉄鋼、化学、海運、航空といった重工業の分野で、非常に実現性の高い代替エネルギー源です。グリーン水素はクリーンエネルギーの貯蔵媒体として利用できるほか、化石燃料に代わって、水素から製造されるアンモニアや肥料、そして、サプライチェーンの構築などが期待されています。
グリーン水素の生産が拡大することで、日本は輸入エネルギーへの依存を減らし、「ネットゼロ」の目標に近づくことが可能となるだけでなく、さらに、低炭素材料や工業製品の製造が加速することで、グローバル・サプライチェーンにおける日本の競争力強化につながると考えています。
未来への資金提供
日本企業はエネルギー転換を実現するための高い意欲と技術力を持ち合わせていることに加え、日本の多国籍企業は海外投資の歴史も長く、金属・鉱業、蓄電池、二酸化炭素回収・貯留、廃棄物発電等の重要な分野に高い専門技術・知識を活用しています。
このような低炭素テクノロジーを急速に拡大させるためには、ファイナンスでも革新的アプローチが必要ですが、少なくとも初期段階では政府からの支援が重要です。今年初めに閣議決定された「グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた基本方針」では、今後10年間で150兆円の官民GX投資を目指しており、政府自体も20兆円規模のGX経済移行債を発行して資金を確保する計画です。また、民間の貸し手が負うリスクの一部を公的資金で保証するというブレンドファイナンスは、日本における革新的ビジネスモデルの成長にも寄与するでしょう。
流動性の高い成熟した日本の資本市場は強みです。株式市場が数年ぶりに高値にあり、海外投資家は日本に関心を示してる中、国内のインフラストラクチャー分野は長期的な投資先を求める投資家の関心を集めています。ソシエテ・ジェネラルは、エネルギー転換の分野で世界をリードする金融機関の一つとして、革新的なトランジション・ファイナンスに関するグローバルな経験と50年にわたり日本で培ってきた深い知識を活かし、日本の企業と投資家のサステナビリティ・トランスフォーメーションをサポートしています。
ソシエテ・ジェネラルは、日本における2つの商業規模の洋上風力発電プロジェクト(石狩湾および秋田港・能代港)を支援している唯一の外資系金融機関であり、一般海域における洋上風力プロジェクト入札のファイナンシャルアドバイザーも務めました。
当グループも今後数十年、経済、環境、社会にポジティブな変化を促すインパクト・ファイナンスの需要の高まりに応え、新たな領域を開拓するお客さまに寄り添うなかで、ソシエテ・ジェネラルのビジネスモデル自体も変革していくものと考えています。また現在、ソシエテ・ジェネラルは、ランドマークとなる様々なプロジェクトへの資金提供とアドバイザリーサービスの提供を通じて、エネルギーのバリューチェーン全体で画期的な脱炭素化テクノロジーの支援に取り組んでいます。
グローバルでは、世界最大のクリーン水素インフラ向け専用ファンド、Hy24の設立と、オーストラリアとカリフォルニアの画期的な系統向け蓄電池プロジェクトを支援しています。さらに、2022年から2025年までに3,000億ユーロのサステナブル・ファイナンスを実施するという当グループの目標も順調に進んでいます。
日本経済の新たな局面を見据え、ソシエテ・ジェネラルは、日本の企業と金融機関がその成長目標を達成できるよう、また日本の未来に向けたエネルギー転換の加速に伴う新たな事業機会、そして新たなビジネスモデルを引き続き全力で支援していきます。
英文はこちらをご覧ください
- https://angeassociation.com/japan-gas-policy-brief/
- https://worldsteel.org/media-centre/press-releases/2023/december-2022-crude-steel-production-and-2022-global-totals/
- https://www.offshore-energy.biz/china-is-worlds-leading-shipowning-nation/
- https://data.worldbank.org/indicator/NV.IND.MANF.ZS?locations=OE
- https://www.iea.org/commentaries/japan-will-have-to-tread-a-unique-pathway-to-net-zero-but-it-can-get-there-through-innovation-and-investment
- https://www.bloomberg.com/news/features/2022-05-30/japan-s-deep-ocean-turbine-trial-offers-hope-of-phasing-out-fossil-fuels#xj4y7vzkg
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2024年第2四半期決算および上半期決算
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インフレ復活は日本経済をどう変えようとしているのか
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